リハビリサービスのご案内
診療内容
近年、日本リハビリテーション医学会では、1:機能を回復する、2:障害を克服する、3:活動を育む、の3つをキーワードとしています。これは、疾病・外傷で低下した身体的・精神的機能を回復させ、障害を克服するという従来の解釈の上に立って、ヒトの営みの基本である「活動」に着目し、その賦活化を図る過程をリハビリテーション医学の中心とするという考え方です。
日常での「活動」は、起き上がる、座る、立つ、歩く、手を使う、見る、聞く、話す、考える、衣服を着る、食事をする、排泄をする、寝るなどです。家庭での「活動」は、掃除、洗濯、料理、買い物などです。社会での「活動」は、学校生活、就業、地域行事・スポーツなどです。リハビリテーション科では医師の指示のもと、発症・受傷・術後早期から介入することにより、患者様の身体的・精神的負担の改善・軽減を図り、社会復帰・家庭復帰を目指すリハビリテーションを行っています。
当院は急性期病院ですので、緊急入院後や手術後の患者様が多くいらっしゃいます。主な対象は、脳神経外科などで取り扱う脳卒中(脳血管障害)、整形外科で取り扱う運動器疾患、内部障害ともいわれる内科的・外科的病気などです。内部障害としては、心臓や下肢動脈狭窄症などの心臓循環器疾患、肺などの呼吸器系疾患、胃腸などの消化器内科疾患や消化器外科手術後、内分泌代謝内科や総合診療科などでの内科的疾患、また前立腺癌などの泌尿器科手術後、乳癌などの乳腺外科手術後、糖尿病教育入院などの患者様にもリハビリを行っています。
また、外来患者様にも必要に応じて症状に合わせ各専門のスタッフがリハビリテーションをしたり、器械を使用する物理療法も行っています。
対象疾患
1脳血管障害
脳神経外科では脳卒中、脳腫瘍、頭部外傷、脳炎、てんかんなどを対象としてリハビリをしています。脳梗塞や脳出血の術後に見られる症状として、手足や顔面の神経麻痺、飲み込みの障害、構音障害や失語症などの言葉の障害、うまく物事ができない失行といわれるような障害、失認、半側空間無視などの症状、また狭義の高次脳機能障害の記憶障害、注意障害、遂行機能障害などにもリハビリ対応しております。
くも膜下出血、頭蓋内出血、脳腫瘍、脳炎やてんかん重積などで片側の手足の運動麻痺・感覚障害や失調などによるバランス障害で立ったり歩いたり出来ない方に症状に応じて、歩行練習や手を使うリハビリを実施しています。飲み込みの障害や発音・言葉の障害、その他の高次脳機能障害などにも対応しています。
2整形外科運動器
当院のリハビリ対応で最も多くみている診療科目です。手術後の入院中にリハビリを行って退院され、退院後も外来リハビリを行っています。
膝、股関節、腰椎などの障害、肩や上肢などの骨折その他の障害などが多く、病名としては、大腿骨近位部骨折、変形性股関節症、変形性膝関節症、腰部脊柱管狭窄症、上腕骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折、足関節周囲骨折など様々です。
整形外科の患者様には、歩行能力の改善に対しては理学療法士が、手の関節や指の動きの改善には作業療法士がお相手していますが、ご高齢の患者様も多く、飲み物や食べ物がうまく飲み込みしにくい方もおられます。この場合は摂食嚥下療法といって、言語聴覚士によりうまく飲食していただけるように訓練するリハビリも行っています。
3心臓循環器疾患
当院循環器内科で対応している心筋梗塞、慢性心不全の治療、心臓血管外科で対応する胸部や腹部の大動脈解離、下肢閉塞性動脈性疾患、下肢の深部静脈血栓症の治療後に対し、主治医の指示内容や学会ガイドラインに沿いながら活動範囲を広げていくリハビリを行っています。リハビリ室も心臓リハビリテーションを実施する為のより良い環境に整えております。
4呼吸器疾患
肺炎や肺気腫・慢性気管支炎、気管支喘息、気管支拡張症、間質性肺炎のような慢性閉塞性肺疾患などを対象にしています。急性期でも早期からの適切なリハビリ治療が必要です。リハビリは、肺だけでなく、広く全身的に行われます。体を動かして痰を出しやすくします(体位排痰法)。呼吸筋の筋力増強訓練、リラクゼーション、腹式呼吸訓練などが行われます。必要なら酸素吸入を実施しながらリハビリを行います。
高齢者でよくみられる誤嚥性肺炎には、早期の離床訓練や運動療法に加え、嚥下障害に対するリハビリ治療も行います。酸素吸入やモニター装着中でも座位や立位などを行った方が良い結果になることが多いため、車いす乗車もすすめていきます。
5内部障害
心臓・呼吸障害も含めて、腎尿路、消化などの内部機能障害を内部障害とも呼びます。長期の安静・臥床などで身体・精神活動が抑制され、その非活動性は能力低下をもたらし(廃用症候群)、内部障害や運動機能障害がさらに悪化するという悪循環に陥りやすいので、積極的に運動を行い、活動性を維持向上させていきます。さらに、薬物療法・食事療法・患者様教育・カウンセリングを加えることが重要です。
最近当院に腎・透析センターができて、腎不全末期の患者様に透析を行っております。そのため、透析中の患者様の入院時にもリハビリを行っております。
6がん(悪性腫瘍)
がんによる障害には、肺がんや消化器がんによる障害、乳がんの術後の肩の運動障害・腕のむくみ、前立腺がんの術後の排尿障害、そのほかにも抗がん剤治療や放射線治療での長期間のベッド上での安静による手足の筋力や体力の低下、骨や筋肉のがんによる歩行障害などが挙げられます。
とくに胃癌や大腸癌など消化器外科の手術後の患者様への対応が増えてきており、周術期がんリハも行っております。これは手術に伴う呼吸器系などへのダメージを最小限にし、術後合併症を減少させることが主な目的であり、術後合併症の減少や廃用症候群の予防が、がん患者様のQOLの向上とともに入院期間の短縮につながります。
また、乳がんの術後の肩の運動障害・腕のむくみ、前立腺がんの術後の排尿障害、抗がん剤治療や放射線治療での長期間のベッド上での安静による手足の筋力や体力の低下、骨や筋肉のがんによる歩行障害などに対してもリハビリを行っています。
当院では、がんのリハビリテーションとして対応できるようになりました。生存率が向上し、がん患者様のQOL(生活の質)が求められる中、より充実した対応ができることを目指して取り組んでいます。
サービス内容
理学療法部門
主に体幹・下肢を中心とした運動療法(関節可動域訓練・筋力強化訓練・バランス訓練など)を行い、機能の向上・維持を図り、生活するうえでの必要な基本動作(寝返り・起き上がり・立ち上がりなど)の獲得、歩行や階段昇降といった日常生活・社会復帰に必要な動作獲得を目指す訓練を行います。
作業療法部門
主に体幹・上肢(手指)を中心とした運動療法(関節可動域訓練・筋力強化訓練・随意性、巧緻性促通訓練など)を行い、精神的・身体的機能の向上・維持を図り、生活するうえで上肢を主として使う生活動作(食事・更衣・整容・排泄など)の獲得や、家事動作など生活関連動作の獲得・指導、社会復帰を目指す訓練を行います。
言語聴覚部門
主にコミュニケーション能力(言語機能・発音・発声など)および摂食・嚥下などの口腔機能に問題がある患者様に対し、個々の障害の評価を行い、専門的なアプローチを行います。食事や対話能力の向上・改善は、生活の質を高めるため小児から高齢者まで幅広く必要であり、機能訓練や生活指導を通じて家庭・社会復帰を目指す訓練を行います。
物理療法部門
主に痛み(関節痛・神経痛・筋肉痛など)やしびれ、血行障害、全身倦怠感などの症状に対し、改善・軽減目的に医師からの指示に基づいて治療を行います。具体的には温熱療法・電気療法・水治療法・牽引療法・寒冷療法・ウォーターベッドマッサージなどがあり、個人の症状に合わせて行います。